ブログの記事更新が滞っておりまして、申し訳ありません。
当店は2名のベテラン整備士が働いているのですが、最近は旧車のご依頼を多く頂くようになって参りまして、順番待ちをお願いする状況も発生しております。
はるばる遠くの県からお越しのお客様も多く、60代と50代の従業員みな忙しさに(嬉しい)悲鳴を上げつつ、お引き立てに心より感謝です。
お待ち頂いているお客様、小さな工場の手仕事ということで、じっくり対応中ですので、何卒ご容赦願います。
今回は久しぶりのご入庫事例ですが、以前お立ち寄り頂いたMGBのお客様からのご紹介の方です。
今年の春くらいからずっとお待ち頂いて、秋にようやっとご入庫となりました。
昭和43年式ポルシェ911T、東京より自走でのご来店です。
外車のご入庫は珍しいです。
エンジンの調子を見てほしい、とのご依頼で、具体的には「エンジンがいまいち不安定で、一度切ると再始動しにくい」などの症状があるそうです。
この不調が気になり、既にお住まい近くのお店数件に見てもらっており、当店は4件目だそうです。
ご紹介者のMGBのお客様も、昨年似たエンジン不調を当店で整備させて頂いており、その関係でのご紹介とのことですが、
それにしても、標高800メートルの隠れ家的立地の当店ですので↓
4件目に選び、ここまで足をお運び頂いたお客様に応えなければ、と改めて気を引き締めるのでした。
(旧車整備の需要は、やはり都市部が多いようです。しかし当店近隣は農村地帯なので、軽トラックの旧車が現役で働いているのはよく見かけます;)
さて、その911Tの到着時の様子はといいますと、
・ふかし続けないとエンストしそうな気配
・半クラ必須のうえ、クラッチがすぐに減ってしまいそうな心配あり
・カタカタなどの異音
このような状態が気になりました。
上2点は比較的深刻な症状ではありますが、排気の音の感じで、原因箇所を何となく特定。
早速翌日から、電気まわりを調べていきます。
電磁ポンプは新品に換装済。
ん?!ガソリンのフィルターが、ポンプの出口に付けてあります。
本来は入口に付けるもののはずなような…。
とりあえず、フィルターを通過したガソリンはキャブレターまで送られているようなので
一応は大丈夫。
だけど、ガソリンタンクに溜まる錆を出口で濾していると、ポンプはすぐにくたびれてしまいます。
なので、タンクとポンプの間にフィルターが付くのが一般的なのですが、
前のお店や購入店さんで、何か理由があってそういう装備にしてあると思いますので、
懸念事項として留意しつつも、次へいきます。
続いてボッシュのコイル、プラグ6本も新品に換装済みなのを確認。
左奥の方を見ると、当時(昭和43年)では高価であったCDIユニットが。
純正の装備だったようです。
これが怪しいのです。
(上の写真白丸部分がCDI。諸事情により、エンジンルーム作業の写真がほとんどなく、文字ばかりの記事になりました。すみません)
この回路を切り、ポイント、ディストリビューター部を掃除・点検・調整後、
当時物GTコイルに交換してみます。
この時点でふかしてみると、エンジンは回転が改善、最初4000~5000YPMだったのが5000YPMを安定して超える程度になりました。
点火時期も進め気味に、調子のいいところを見つけながら細かな調整を重ね、レッドゾーン6500YMP以上までストレスなく到達するまでに。
さて、旧車によくある電圧ドロップですが、今回の場合もイグナイターコイルにかかる電圧が11Vしか来ていません。
15V近く一定に出せる電圧ブースターを追加しこれを補い、更に当時物CDIユニットも取り付けました。
かれこれ3日ほどで、エンジンの調子が仕上がってきました。
最後の仕上げとして、始動時などのスローでエンストしないよう、ファストアイドリングアップ装置を追加することに。
運転席のワンタッチ手元操作で、スローの回転数を1000→1500~1600回転へと切替えることが出来る装置です。
バキューム回路と電気回路を新設して製作しております。
最終的な状態として、ふかし上げや、半クラをあまり使わなくともスムーズにスローから発進、
アクセルの踏み込みに素直にエンジンの回転が応え、一気に約6000回転までふけ上がるようになりました。
最後に異音ですが…
これはマフラーの溶接が取れてブラブラしていたカタカタ音、(隙間を溶接し直します)
それとヒーターへの送気ホースの穴あき(写真は修理後)による、空気漏れの音でした。
余談ですが、整備後の試乗で、オーナー様がなかなか帰って来られなかったのにはドキッとしました。
故障か!?と…(結果大丈夫だったのですが、このとき結構遠くまで行かれてたみたいです)
お役に立てましたら幸いです。
東京都からお越しのオーナー様、ご紹介頂いたH様、ありがとうございました!