【旧車】マツダ キャロル360 整備とカラーリング変更(鹿児島)

いつもありがとうございます。
ボデイーショップ・オギです。

今回はこちらの記事でちらっとご紹介したキャロルの記事です。
長らくお待たせしてしまって、大変申し訳ありません。

キャロル
お客様撮影

こちらのキャロルをお預かりしたのは、かなり遡って去年の春です。遠方からのお問い合わせだったので、当時は驚きました。

当店は長野県ですが、お客様は鹿児島県在住だそうなんです。結構距離があります。(鹿児島は九州の一番南の端)
よく県外から旧車修理のお問い合わせを頂くのですが、長野県ですが大丈夫ですか?とお尋ねすると、「え!そんなところ!?ちょっと遠いから考えます…」となることがほとんどなのです。

ところがこのお客様は、その距離をものともせず、大切な愛車をまるごと、(遠い田舎の、得体のしれない修理工場である)当店に一任(!)しかも、ご本人は感染症の情勢も考慮され、一緒には来られないとのことなので、やり取りは完全リモートです。

ビデオ通話をはじめ、色々な部分で初めてのパターンでしたので、手探りの上にいつもよりも緊張しました…。

何はともあれ、まず、お車を運んで来ることから。鹿児島は長距離記録更新、今までにない形でのお預かりですので、慎重に準備をします。
通常、車の輸送はあちこちを経由し、載せたり降ろしたりを繰り返しながら、業者さんの積載車に複数台相乗りさせますが、今回はそれは出来ません。
なぜかというと、
・各地を経由する為日数が長くかかる。
・順番によって、積み下ろしが何度も行われる。
・積載車の運転手で、旧車を運転できる人が少ない。
・料金が割高になる傾向
・途中でエンジントラブルなどが発生すると放置されてしまう事あり(経験あり)

それだけ一般車両の陸送に比べて慎重さを求められるという事です。今回のような場合はどうしてもキズなどのリスクも高くなります。旧車は替えが効かない為、絶対に避けなければなりません。

検討の結果、当店の積載車にてトラブルがあっても対応可能な、旧車の扱いに慣れた長距離ドライバーがお迎えに上がることになり、1350kmを最短時間で往復、はるばる無事に入庫となりました。まずは一安心ですが、あまりに長距離なので運んでいる最中はドキドキしっぱなしで(お客様ではなく、当店スタッフが)、何度も状況確認の電話がドライバーにいきました…。

さて、前置きが長くなりましたが、ようやくお車とご対面です。

事前にお伺いしている内容と、実際の状態をすり合わせて、確認していきます。

ご依頼は多岐にわたりますが、大まかには、

・外装(板金塗装とメッキ)
・全体的な調整と、クリーニング
・内装
・冷却効率向上

などなど…

まずは外装のうち、比重が大きいボディーの板金塗装に着手します。

ボディーの板金塗装

今回は単なる板金塗装ではなく、冒頭の写真のような赤系のカラーリングから、青系へと塗り替えるというご注文です。

また、雨の日などに、表面がぽつぽつと浮き上がってしまうという症状があるということで、これも直していきます。
この症状は、以前に再塗装したことのある車にたまに見られる症状です。塗装面ではなく、下地層以下に問題があることが多いため、一旦鉄板がむき出しになるまで数日間ひたすら削り、一から塗装し直します。

キャロルドア

思い切って全剥離。赤い層はパテです。剥離していく中で、過去の再塗装が複数にわたっており、よりトラブルが起きやすいことが分かりました。

↓やっと鉄板むき出しになったところです。白い部分は、過去に修理したと思われるヘコミに入っていたパテです。この辺も改めて板金作業します。
鉄板むき出し

↓パテを盛って乾燥させているところ。

パテ

隙間のひずみ・ゆがみが比較的多かったため、それらも補正しています。パーツ同士のカーブ(クリアランス)が一致するように調整↓

↓塗装後

と、ここまで写真にて流れをご紹介していますが、途中で問題が。
ブログにはいいことだけを書きたいところなのですが、正直に書きますと、カラーの間違い…。

お客様のご希望は、
ルーフ=白、ボディー=ブルー
だったのですが、当店のミスで、ルーフをブルーに塗ってしまったんです。

お客様に確認画像をお送りしたところ、「頭の色が違う!」とご指摘を受け、そこでミスが発覚。
お客様曰く、「こっちのサンプルではなく、こっちです」……!

プロとして大変不甲斐なく、あってはならないことなのですが、初の試みである完全リモートでの打ち合わせと、スタッフのIT不慣れが相まって、早とちりによる判断ミスが発生してしまいました。
昨年は世間一般の会社でテレワークが普及したようですが、実際に自分たちで経験し、それを使いこなすことの難しさが身に染みた出来事でした。

ルーフについては正しい色に再塗装し、お客様にはご納得頂くことが出来ましたが、今後はミス再発防止の為、確認の徹底を行う所存です。

そして、心の広いお客様に支えられ、ボデイーショップ・オギの今が在るのだと、改めて感謝申し上げる次第です。

 

冷却効率の向上

そんなボディーに並行して、エンジンルームにも着手しています。全体的なエンジン性能と、冷却効率の向上を目指す作業です。

冷却効率の向上のためには、当店では通常、ウォーターポンプ交換+空冷ファン+ラジエーター追加取付を行いますが、今回はウォーターポンプは交換済ということでしたので省略します。代わりに、お客様のご提案で、小山方式のクーリング回路を追加しました。

キャロルはリヤエンジンのため、ラジエーターが横向きについているため前からの風を受けられないことに加え、エンジン側から外側へ風が流れる構造のため、ラジエーターには温風が当たることになり、冷却効率が比較的良くないです。現行車に合わせてスピードを出すことを考慮すると、もう少し余力も欲しいところ。特に鹿児島の夏場は、一般道を走る上では冷却機能の強化が必要です。

↑追加した冷却ファン

昨年、別のキャロルにも同様にファンを取り付けましたが、今回はそれよりも一回り大きい9インチ径で、ラジエーター左側とボディーの間にぎりぎりおさまるサイズにしました。

キーにON/OFFが連動し、本電源はセルモーターへ向かう太線から取り入れています。サーモスイッチによる水温連動式ですが、アッパーホース側ですのでエンジンがあたたまると回転します。

マニュアル操作も出来るよう、スイッチを運転席手元に設置。

このキットは、単体でも販売中です↓

旧車部品販売・取付 BodyShop - OGI

旧車部品各種取り揃え。当店では取付も承ります。こちらはマツダキャロル360用電動空冷ファンキットの販売ページです。…

 

そして小山方式とは、キャロルの第一人者小山さんが開発された冷却方式のことで、ステンレスのフレキシブルパイプをエンジンルームから車体下部を通り前から後ろに一周させ、走行風によって水温を低下させる機構です。

小山方式

パイプは全長6m。こちらは、当店では初めて施工しました。ラジエーターの原理ですが、単純な機構に比して、有効性が高く、ナイスアイディアです。

 

エンジンの性能向上

冷却機能向上に加え、点火方式をポイント式からセミトラ式へ変更することで、長寿命化をはかります。

旧車は大抵ポイント式ですが、これには欠点があり、12Vの電圧がそのままコイルに流れるため、接点が焼けやすいのです。セミトラ式にすれば、接点には信号に分の最低限の電圧しかかからないため、大幅にポイントの寿命を延ばすことが出来ます。
(もちろん、フルトラ式にまですれば、接点も必要なくなり、高回転時にもポイントのあばれが無いので正確な点火ができます。しかし、こちらのキャロルにはフルトラ化に必要なディストリビューター内ピックアップユニットが見当たらなかったため、セミトラ式でのバージョンアップとなりました)

セミトラ式にすることで、
・アイドリング時安定
・回転数向上
・始動のスムーズさ
が期待できます。

そしてもし万が一、セミトラアンプが故障した際にノーマルに戻せるよう、コネクターをつけてありますので、差し替えでセミトラ⇔ポイントと変更できます。
当時の永井電子製のものに倣った構造です。

プラグコードも新品に交換。

プラグコード、セミトラユニットそれぞれ販売中です↓

旧車パーツ販売・取付のBodyShop-OGI

旧車部品各種取り揃え。当店では取付も承ります。こちらはマツダキャロル360のイグナイターセミトラキットの販売ページです。…

旧車パーツ販売・取付のBodyShop-OGI

旧車部品各種取り揃え。当店では取付も承ります。こちらはマツダキャロル360のプラグコードの販売ページです。…

 

次に点火時期を調整。タイミングのよいところを見つけます。

当時の適正点火タイミングより、少しだけ早いくらいです。(多くのキャロルは、フロントの三角窓などに”点火時期調整済”という青いステッカーが貼ってありますが、これは昭和48年の排気ガス規制に対応するため、タイミングを遅めに調整したものと思います)

点火時期の調整は、フライホイールのメクラカバーを外し、タイミングライトを使用して目視で行うのが正統派ですが、それでは片手落ちの感があるように思います。
マフラー排気の音をよく聞くと、一定のきれいな安定した音が出るタイミングがありますので、アイドリング、排気音、ふけ上がりのスムーズさのそれぞれが調和するタイミングを計ります。
アナログなアプローチですが、キャロルに限らず、キャブレーターを用いた旧車の調整をする際には、有効な指標です。

最後には、CD・HCテスタにて、排気ガス量も基準値内に収まるよう調節し、エンジンフィーリングの改善を行いました。
水冷4気筒のOHC360ccです。60km出れば嬉しいところですが、こちらのキャロルは状態が良かったため、70kmまで加速出来るようになりました。
整備によって限界を引き出すことは出来ても、その限界が何kmほどになるかというのは、車体自体の程度に依存するところが大きいですね。

↓もちろんキャブもクリーニングします。

ポイント

 

アルミ・メッキ塗装

続いては、外装のアルミ・メッキ部の補修です。

こちらも、ゆがみが目立つ部分が多かったため、まずは板金から。
リヤエンジングリル

リヤエンジングリル(ラジエーターグリル)などは、アルミ製で非常に薄い作りの為、少しの力で曲がってしまいます。時間をかけて、歪みを直していきます。
リヤエンジングリル2

形状が整ったら、塗装です。ここはアルミ感が出るよう、シルバー塗装ではなく、アルミ塗装です。
ベースに黒を塗り、形の狂いがないことを確認の上、アルミ塗料、最後にクリアーでコーティングします。

アルミ塗装

そしてこちらはアルミではなく、クロムメッキのホイールです。メッキというのは性質上、金属の上にしかかけることが出来ません。単純にメッキを掛け直すだけであれば、メッキ屋さんにお願いするのですが、今回は大きく凹んだ箇所をパテで板金した上でメッキをかけなければならない問題がありました。

↓パテでへこみを補修途中のホイール
ホイルパテ

特にバンパーなどはパーツが大きいこともあり、メッキ屋さんに依頼するのは困難と判断し、それらにはメッキ風塗料を使用することにしました。

数種類に分けられる車の金属塗装のうち、シルバー塗料、アルミ塗料などは比較的簡単・安定して塗装が可能です。(キャロルでは、アルミ=グリル・モール等、メッキ=ホイール・エンブレム・バンパーなど。シルバーはありません。)

しかし、そんなシルバーやアルミ塗料に対し、メッキ塗料は難易度が高く、商品自体も少ないです。
他の塗料と同じ感覚で扱うと、失敗して黒く変色したり色がつくという現象が起こるため、独特の塗り方を忠実に守る必要がある、実に癖が強い塗料です。扱いが非常にシビアで、ボディーの塗装で難しいとされる白系スリーコートパールの3倍くらいの神経を使う感覚です。
完成までに通常塗料の数倍の手間と時間を要し、忍耐が試されますが、成功するととてもきれいな光沢が出ます。

板金の必要が無ければ、餅は餅屋ということで、クロームメッキはメッキ屋さんにお願いするのがベストかなと思いますが、費用を抑えたかったり、今回のように板金を要する入手不可部品の再生仕上げの際には、メッキ風塗料が有効です。

↓メッキ塗装後のホイール

出来る限り新品状態に近づけることを目標に仕上げを行いました。

 

内装

続いて内装です。

デラックスグレードのダッシュボード上部の樹脂部分。結構傷んで、割れてしまっています。↓

交換したいところですが、交換品は入手困難のため、現物修理です。
ひび割れ部分を接着、上から黒いレザーを張りました。
↓ダッシュボードに戻したところ

天井もひび割れ等のダメージが大きかったので、一旦全部はがします。

固着した接着剤のほか、パテも入っており、それらもすべて綺麗に剥離して整えたあと、改めて生地を張りました。

↓ドアのキャッチが割れて破損していたので、アルミ塊からパーツを作成して交換。

↓ウェザーストリップゴムも張り替えています。(画像中央の穴が二つ開いているのがアルミから製作したキャッチのパーツ)

 

足まわり

最後に足まわりですが、ブレーキライニングの割れ、ホイルシリンダーカップ、ショックアブソーバー、ブレーキマスターのオーバーホールなど、へたったパーツの交換修理を中心に行いました。
↓交換したショックアブソーバー。リヤエンジンなので、後ろの方が特にスカスカになりやすいです。

ステアリングラック。くたびれてはいますが、ブーツはまだぎりぎり切れていません。

一式クリーニングし、ブーツを交換しました。初めてこの作業をされる方は外し方に頭を抱えるのではないでしょうか。

交換用ショックアブソーバー各種販売中です。

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旧車の部品を販売しています。キャロル、ベレットなど多数お取り扱い中。レストアや修理も承ります。…

ステアリングラック関連パーツ一覧

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最後にマフラーを交換。マフラーは複数穴があり、肉も薄くなってきており修理も効果が薄いだろうという状態だったので修理は行わない判断に。
新品は入手困難なので、比較的状態のいい中古パーツを整備し交換品として使用しています。

マフラー

 

整備完了

春から半年以上お預かりし、冬にやっとすべての工程が終了、お返しする日が来ました。
当初の打ち合わせでは、もっと短期間でのお返し予定でしたが、旧車は手を入れていかないと発見できない問題も多く、予定より長くお預かりしてしまいました。この辺りは雪が降り道も凍るため、本格的な冬の前にお返しするところまで漕ぎつけることができ、安堵しています。

お迎えに上がったのと同じドライバーが、細心の注意をはらってお届けしました。

ドライバーいわく、途中少し休憩に立ち寄ったサービスエリアでの食事中も目に付く場所に駐車し気を抜かず見守っていたそうですが、通りがかりの皆さんがキャロルを指さして近寄ってくるので、疑心暗鬼というのではないですが、非常にハラハラしたそうです。(珍しいので近く見たくなります、その気持ちは分かります。)

お客様に直接お会いしたのはドライバーのみですが、その短い時間のなかでも、このキャロルのことを本当~に大切に思っていることが伝わってきたと言う事でした。

通常、当店ではオーナー様とは直接お会いして、その方のこだわりやお車への向き合い方を探ります。言外の想いなども出来る限り汲み取ろうと心がけています。
そんな中、今回はスマホなどの小さな画面を通してのリモート面会でしたので、行き違いの不安なども大きかったのですが、お客様には柔軟かつ寛大なご配慮を頂き、工程を進めていくことが出来ましたこと、感謝申し上げます。
この度は大切なお車をお預けくださり、ありがとうございました。

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