前回はキャロル360の車検の記事でした。
今回は昭和42年式、日産 グロリアPA30の車検です。
こちらすごく久しぶりに、長野県内からのご入庫です。
また、車検ではめったにないケースなのですが、直接オーナー様からのご依頼ではありません。
左ロアアームブーツが切れていることが原因で、車検を通すのが難しいだろうということで、他店様からのお預かりで当店で点検整備させて頂く次第です。
早速各部点検していきます。
まずはブレーキまわりから。
ブレーキオイルは真っ黒で、状態が良くないなと思いながらリヤホイルシリンダーの動きを確認すると、案の定ほとんど動かないです。
ひとまず、カップを交換。ゴム類は劣化が激しいです。
真っ黒のブレーキオイルは茶色い錆も混じってドロドロ状態なので、
これは十分きれいなオイル色に変わるまで入れ替え作業です。
リヤブレーキライニングもかなり減っていましたので、左右とも交換。
新品は入手困難なので、リビルト品ストックを使用しました。
※ブレーキライニングは土台が無事であれば、すり減った部分を復活させるリビルトサービスもやっています。土台が無事なライニング(コアパーツ)をお送り頂ければ、リビルト品を返送させて頂くサービスですので、ぜひご利用ください。
こんにちは。いつもありがとうございます、ボディーショップ・オギです。 今回は、ベレット用リヤブレーキライニングの短期リビ…
ブレーキホースもヒビが多く、要交換状態です。
純正品は入手困難なので、ストックの代用品の中から、長さが近いものを使用しました。
部品を交換するだけなんですが、旧車はパーツが固着しているものがよくあり、錆や汚れで一体化した部品を外すのは意外に時間が必要です。
アルミ製のホイルシリンダーなどは、割れたら一巻の終わりで、交換部品が無いので、乱暴に衝撃を与えることは出来ません。無茶せず、破損させないよう、慎重に作業します。
通常なら1時間で終わる交換作業なのですが、今回の場合は2日くらい要しました。
余談ですが、スカイライン他日産車のパーツはまだまだ入手出来るのに、グロリアのホイルシリンダーは手に入らないです。同時期の130セドリックとも形状が異なるので、余計にレアです。230セドリックからはグロリアと同型車になりましたが、このA30型はプリンス系統なので、セドリックとは足まわりも互換性が無いのです。
ダブルウィッシュボーン・リーフスプリングは共通かと思いきや、やはり各寸法、ホイルの穴やピッチが異なります。
PA30前期型は、エンジンもプリンスG7 6気筒OHC、後期型は日産のL型エンジンに変化しています。
しかしキャブレターに関しては、セドリックのシングルキャブに対してG7同様の4バレル型キャブが付いていまして、約5PSの違いがあり、ちょうど過渡期と言えます。
パーツが手に入りにくい訳です。
形が違います↓
脱線しましたが、ブレーキまわりの調整が終わった後は、その他の部分を点検します。
ウォッシャータンクのモーターが回らずウォッシャー液が出ないので、タンクごと交換し、配線加工。
ブローバイホースも代用品を製作し取り付けます。
もちろん、ロアアームブーツも交換済みです。
(ペダルゴムも代用品に交換しています)
テールレンズは色が褪せて、左右で色味が変わっていました。黄色と橙色くらいの差があり、更に右側にはヒビを発見。
ここでも交換品は無いので現物修理です。
割れて破片が行方不明な時は困りますが、今回はヒビだったのが幸いでした。
専用瞬間接着剤にてヒビを埋め、色味を合わせるため、クリアーにオレンジ系をほんの少し混ぜて調色したものを塗装します。劣化による曇り具合なども考慮しながら、左右で均等な色味になるようにしました。
あとは排気、トーイン調整、光軸、スピードメーター差など一連の点検を行い、長野市にある陸運局(ちょっと遠い)へ。
いつも通り通過かと思いきや、ここで事件が!
車検では「ブレーキ踏んで~」とか、「ウインカー右つけて~」と指示されるので、順番に操作していく検査があるんです。
「サイドブレーキかけて~」で、サイドブレーキをかけました。
そうしたら、
………………………..。
サイドブレーキワイヤが切れました…。
工場では引き代調整、試運転、積載車への積み下ろしなど、何度もサイドブレーキを使っていたのに、本番の検査ライン上で一発目に切れるという、宝くじ的当たりを引いたのです。
切れた箇所はワイヤーがむき出し部にローラーが当たる構造になっており、曲がりが強い部分です。
経年劣化による金属疲労と、油分不足、錆などによって、見えにくい箇所に亀裂が入っていたようです。
2週間以内にサイドブレーキのみ再検査ということになり、この日は長野市の陸運支局から片道65km、御代田町の工場へ帰るのでした…。
帰ったものの、困ったことになりました。
旧車はとにかく部品が手に入りません。
サイドブレーキワイヤも例外ではなく、交換は無理。
モヤモヤしながらお昼ご飯を食べていたら、ひらめきました。
そうして午後一番にリフトに上げたグロリアのお腹を眺め、現物修理しようと決定。
まずは切れて傷みが酷い部分のワイヤをきれいに切り取り、無事な部分を20cm位ひっぱって詰め、専用の部品で繋げます。
次に、ひっぱって短くなった分だけ、リヤ側にステーを追加。
遊びを調整できるよう、アジャスト機能も付けました。
(緑丸が追加部分)
分かりにくいですが、こんな感じになっています。
後日、再度陸運支局にて検査、今度は無事合格となりました。
この度は当店に車検をお任せくださり、ありがとうございました。