バナナオートでの車の板金塗装の事例をご紹介するページ、今回は【トヨタ ヴォクシー】です。
修理前の状態
衝突事故によって、クオーターパネルとリヤバンパーが大きく凹み、キズもついてしまっている状態です。
お客様によると、事故以来エアコンの具合が悪くなってしまったとのこと。
原因を調べながらボディの板金修理も行っていきます。
実際の修理
ちょっと特殊な構造なのですが、ヴォクシーはエアコンのユニットがクオーターパネルの裏の空間に設置されています。(空洞な車も多い)
ちょうど事故で凹んでしまった部分に近く、ピンポイントでダメージを受けて故障していることが疑われたので、直接確認していきます。クオーターパネルなど、車体後部のパネルは溶接で一体化された構造なので(前方やドアなどは基本的にネジで止まっています)、ネジを外して一枚ずつ分解…という訳に行かず、おおよそ見立てた部分の鉄板を思い切って切り取る開腹手術となります。
さて、エアコンのユニットが見えてきました。どうやらユニット自体は無事のようでしたが、クオーターパネルが凹んで内側に深く出っ張ってしまった部分にモーターが引っかかって動かなくなっていました。
エアコンの不調はこれが原因のようです。
原因が分かったので、クオーターパネルを修復していきます。まずは交換を行う範囲を大きく取り除きます。写真中央の白い点々が溶接されていた部分(溶接スポット)で、スタッフが手にしているベルトサンダーという機械でひとつひとつ削り取ります。
熱や鉄粉などの飛散から守る為、車内は防炎布(黒い布)で覆います。
エアコンユニットの向こう側の景色が見えていますが、これは内張りを取り外した状態であるためです。溶接スポットを露出させるために内張りを外す必要があるのです。
樹脂や布で出来た内張りを外すと外殻のパネルのみ残ることから、内側に鉄板が入っている二重構造などではなく、車体を支持するものはこの外側のパネルのみであることが分かります。
ところで近年の自動車は燃費の向上が顕著ですが、それを支える要素の一つとして、車体の軽量化が挙げられます。軽量化のために、このパネルをかなり薄くしていることが多いのです。
旧車のパネルと比べてみると、その厚さの違いが分かりやすいです。
パネル一枚(というのは極端ですが…)で隔てられた中に座席もあります。
今回の例ではエアコンユニット自体が大破せず無事であったこと、もっと大変な事態にならず、本当に良かったです。
剥ぎ終わりました。ここに
新品の交換部品を厳密に狂いなく取付け、溶接し直します。
この取付けのときにほんの少しでもズレが生じると、クリアランスが左右で違ってしまい、テールランプが片方飛び出たりもします。スライドドア取付け後にうまく閉まらなくなったりもします。
また、ヴォクシー本体の色が暗いので分かりにくいのですが、この交換部品は塗装前です。何となく反射がボケ気味なのがお分かりいただけると思います。トップコート未塗装の新品の鉄板はどれもこのように黒い地の色をしているんですよ。これは錆止め塗料の色です。
黄色い布は、こちらも防炎です。
塗装の前に取り付ける理由は、溶接跡を残さないためです。
溶接したつなぎ目にパテを盛り↓
なめらかに研磨↓した上から塗装することで、ひとつなぎの鉄板のような仕上がりになります。
塗装を終えた状態がこちら↓
先ほどの地の色の状態のときよりもツヤツヤしているのが分かります。
リヤバンパーも割れてしまっていたので板金塗装を行います。こちらは割れを修復しサフェーサーを拭いて下地を作ったところです。塗装終了後にヴォクシーに取り付けます。
バナナオートの板金は仕上がりを重視して、部分的な塗装ではなく一本全部を塗装します。そのパーツ内で塗装部分が変に浮かないよう、また、その他のパーツとのなじみも計算して美しく仕上げます。
最後に、リヤフェンダー修理のため外していた窓ガラスとスライドドアをはめこんだらすべての工程が終了です!