バナナオートでの農機具修理の事例をご紹介するページ、今回は【ヤンマー AF330】です。
トラクターの型が古くても諦めないでください
御代田町のお客様です。ヤンマーのキャビン付きトラクターのエアコンが効かないというご相談です。
キャビン付きは乗用車と同じで運転席が閉鎖空間ですので、エアコンが不調だととても困ります。
お客様は他社に一度持ち込んでみたものの、古いので部品が入手不可、修理不可能と断られてしまい当店へ。
早速可能性が高そうな原因から調べていきます。
まずクーラーガスが減少しているのではないかと疑い、ガス圧を調べてみると少なかったため、ガスを規定量まで充填してみました。しかし、エンジンを起動して確認してみたところ、数秒でコンプレッサーが止まってしまいます。これはコンプレッサー本体が故障しています。
エアコンコンプレッサーと、それを回すベルト、アイドラーテンショナーを交換することになりました。
修理前の状況
取り外したエアコンコンプレッサー。完全に起動しません。
コンプレッサーは冷媒(クーラーガス)を循環させるパーツです。気化熱の原理を利用して室内を冷却する、エアコンの心臓部です。
こちらはエアコンベルトを回しているアイドラーテンショナーのプーリーです。焼き付いてしまい、ロックして動かない状態でした。ベアリングの消耗が原因です。
メーカーに純正部品の在庫を問い合わせてみたものの、型が古く廃盤になっていました。たいていの農機具修理工場さんでは、交換部品が手に入らない場合修理不可能と判断し、依頼をお断りされるケースが多いようです。今回のお客様もそういう事情にお困りでした。
故障したエアコンパーツの修理
アイドラーテンショナーについては、同じ寸法のプーリーが見つかったので、それを代替で使用することで解決となりました。
そして肝心のコンプレッサー。
完全に故障しているので、丸ごと交換したいのですが、メーカーでの部品生産が終了してしまっています。
交換新品が入手不可能な場合の手段として取り外したコンプレッサーを現物修理し、リビルト品の状態にします。新品よりは価格が抑えられ、かつ新品に見劣りしない状態まで再生したものがリビルト品(再生新品)となります。
今回もリビルトしました。
更にエアコンのコントロールユニットも接触不良を起こしていたため、交換を行いました。
現物を分解して接触不良を起こしている箇所を点検したかったのですが、ボックスの内部は樹脂がいっぱいに詰まって固められていたので叶いませんでした。
コントロールユニットはエアコンコンプレッサーの制御装置です。先端の温度センサー(サーミスタ)により、暖めすぎ・冷やしすぎを防ぐ役割を持っています。
このコントローラが設置されているのはボンネットのすぐ下、そしてエンジンの上部で、大変な高熱にさらされる位置です。電子部品にとっては負担が小さいとは言えず、憶測ですがやはり長年の使用の中でどうしても故障しやすくなるのではと思われます。
写真は不鮮明ですが、奥にあるのが新しく交換したコントロールユニット、手前にあるのが取り外したユニットです。
この交換用サーミスタも取り扱い開始しました。お買い上げいただいたみなさまからの情報によると、多くのヤンマートラクターに適合するようです。
エアコンが効かなくてサーミスタが怪しいなと思われるときにご検討ください。
【ヤンマートラクター】サーミスタ(サーモアンプ)|BodyShop-OGI
ここまでの修理を完了し、配管につながるコンプレッサーを外したときに抜いたクーラーガスを再度注入し、テスト運転を行い、問題なくエアコンが作動している事を確認しました。
古い型・生産終了の部品でも、諦める前にバナナオートにご一報ください。
メーカーさんに修理を依頼すると、”もう古すぎる型だから”とか、”部品を生産終了しているから”と断られてしまう事例があります。
バナナオートの近隣に多い農家の方でも、ずっと同じ農機具を何年も使用され続けている方は多いです。長年乗り慣れた農作業の相棒として大切に使用されていて、不具合のある箇所さえ修理すればまだまだ活躍できると分かっているのに、ひとつの部品が手に入らないからという理由で丸ごと買い替えざるを得ないというのは非常にもったいないし、残念なことだ、どうにかしてほしいという農家の方の嘆きも存在します。
もしもそういった事態に陥った時は、一度バナナオートまでご相談いただければ幸いです。
今回の事例のように、もう純正では手に入らない部品は、新品交換ではなくリビルトするという手もあります。
型の古さや部品が生産終了などといった理由で他で断られてしまった農機具の修理実績も豊富な当店の整備士が、不具合箇所を拝見致します。(状態によっては修理完了までにに1~2週間ほどお時間を頂く場合がございます)
使い慣れた・まだ使えるものを 手放さなくても良いように、技術と知恵を尽くして対応させて頂きます。
追記
当記事をご覧になった栃木県のお客様からお問い合わせがありました。(ありがとうございます!)
御代田のお客様と同じく、年式の古いヤンマーのトラクターをお持ちで、エアコンの調子が悪いそう。
バナナオートの記事をご覧になっているうちに、「うちのもサーミスタコントローラがダメなんじゃないか?」と疑いを持たれたそうです。
型式はAF24で、AF330とはAFシリーズの兄弟です。
サーミスタは同じ品番のものが搭載されていますが、やはりメーカーでの製造は終了しており、お困りだったようです。
遠方なのでサーミスタコントローラユニットのみお送りさせて頂きました。
在庫僅少ですが、クーラーが冷えないなどのトラブルでお困りでご入用の方はお問い合わせください。
■3/6 更に追記です。
後日、栃木のお客様からお電話がありました。「送ってもらったユニットに交換してみたらまたエアコン使えるようになりました。よかったです、ありがとう。」とのことです。故障箇所を直に拝見した訳ではなく、電話での遠隔やり取りのみで部品をお送りしたのですが、お役に立てたようで&結果をお知らせ頂けて嬉しいです。直ってまた使用できるようになって本当によかったです!この度はありがとうございました。
■6/2 その後です。
おかげさまでこちらの記事を読んでサーミスタとプーリーについてのお問合せを多く頂き、とても嬉しい限りなのです。しかし、エアコンの不調はサーミスタとプーリーだけが引き起こすものではありません。そもそものエアコンコンプレッサーがダメになってしまう(焼き付き)ことも原因の一つです。
当記事の最初でご紹介しているヤンマーのAF330(御代田町)の場合は、コンプレッサーのリビルド部品を探し出して交換出来たので良かったですが(同じ機種でもリビルト部品はいつでも安定して在庫が供給される訳ではない為)、トラクターの種類によっては完全に使える部品が見つからないことも可能性としては有り得ます。
本当に重要な部分で変えもきかなくなってしまうと、それはもう諦めるより他なくなってしまうので、出来れば不調に陥る前に予防し、長持ちさせたいですよね。
そこで現在まだ現役なトラクターにも、エアコンコンプレッサーオイルを追加して入れることがおすすめです。
一般的にエアコンの冷えが甘くなってくると、クーラーガスはチャージしてもオイルを入れる方は少なく思います。
クーラーガスが減るのにオイルも減っていないとは限りません。とりわけ年代物のトラクターなどは乗用車よりもガスが多め(乗用車の倍の規定容量の場合も)に入るようになっていますが、その多めのガスが少なくなる頃にはオイルも減少している可能性が高いです。
※年代物トラクター(エアコン付き)は、大抵リザーブタンク(ラジエーターの横あたり)の真上をよく見ると、丸いのぞき穴(直径1cmくらい)がついています。見慣れていないと少し難しいですが、窓の中が白く泡立って濁っていると、ガスが少ない、透明の場合はガスが十分量入っている又は全くないと目視で判断出来ます。クーラーが多少なりとも効いている場合は、ガスが満杯に近く、コンプレッサーは動いているのにぬるい風しか出ない場合はガスが空っぽという風に見分けます。
エアコンオイルの追加にイチオシの商品があるので紹介させて頂き、6/2の追記を終了したいと思います。▼
スリーボンド6905
カーエアコン用高性能潤滑剤 ハイブリッド車対応
クーラーコンプレッサーを振動や焼き付きなどから守る役目であるエアコンオイル。スリーボンド6905はそのオイルに特殊な添加剤を配合した高性能潤滑剤です。コンプレッサーの摩擦抵抗を低減し、エアコン作動時のパワーロスを改善し冷房効率を向上します。エンジンオイルを含め、オイル類は少しづつ減ったり、くたびれていきます。そうするとコンプレッサーにダメージが入りやすくなるので、定期的に新しく入れて頂くのがおすすめです。
こちらの潤滑剤は、簡易的な注入バルブが付属しているので、専用の機材を用いなくても注入が可能です。低圧側のバルブに差すだけで注入が出来ます。5~10分で注入が完了する、比較的手軽な商品です。こちらの商品は当店店頭で取り扱い中です。遠方の場合、商品代3,600円(税込3,960円)で注文も承りますが、この場合はお近くの整備士などの方(エンジンルーム内や農機具の専門知識をお持ちの方)に注入可否の最終的な判断・施工をお願いしてください(過去1年以内にクーラーガスやオイルなどを補充している場合は、過充填により故障の原因となる可能性があります。規定量はお守りください)。
また、
・HFC-134aガス以外の車両
・外国車
・改造車(エアコンコンプレッサーを取り替え済の車両。オイルの過充填を避けるためなど)
にはご使用頂けません。
低圧バルブの位置が奥にある場合なども、物理的に充填困難となります。(下写真参照。このように空間に余裕があると入れやすいです)
▲注入バルブが固定形状なので、十分に容器の入るスペースがあることをご確認の上ご使用ください。
色々と使用上の注意事項が並んでしまいましたが、本当にお伝えしたいのは劣化や故障は日々のメンテナンスで軽減できるということです。
でも農機具の場合は車検も無いですから、メンテナンスをスルーしてしまう落とし穴…。働く車でも、酷使だけでは寿命を短くしてしまいますので、何か深刻なことが起こってからではなく、ちょくちょく整備が大切です。人間とおなじですね。
当店はお客様からの依頼で日々の仕事が成り立っていますから、仕事が減りかねない(汗)…ですが、農機具はお使いのご本人がこまめに気にかけて頂くのが一番です。異常にも軽症なうちに気が付きやすくなります。
AF330のトラクターのエアコンについての記事を掲載してから、あちこちのオーナー様からお問合せを頂くことが増えたものの、遠方の為リモート(電話)相談しか出来ないことが気になってまいりまして、今回追記でメンテナンス用品をおすすめさせて頂きました。本当は現物を見ながらの点検・整備が一番なのですが(お近くの方はぜひお越し頂ければと思います)…。
※今回の追記でご紹介した潤滑剤は、あくまで深刻な不調やトラブルが発生する前の予防です。もし既に大きなトラブルを抱えている場合は、お近くの専門店や修理工場などにご相談ください。
※長年の使用の為のメンテナンス用です。すでにコンプレッサーを取り替えている場合はご使用にならないでください。
※不適切な使用方法での事故やトラブルについて、当店は一切の責任を負いかねます。必ず専門知識のある方が施工し、ご使用前には取扱説明書をよくお読みください。